〼(ます)健の備忘録

置き去りにしてしまいそうな好奇心を残せたら良いな。

陸上長距離実業団コラム:Hondaの新体制をどうみるか

 コロナショックで大会・記録会こそなくなったものの、チームは新体制を整え、動き出すシーズン。陸上の実業団はプロ野球球団ほどメンバーの出入りが激しくないが、今年は少し話題になったHondaの新体制から色々語っていきたい。

 

1 シビアに見えても理にかなったHondaの新体制

 Hondaの新体制が話題になった理由は、まず実績・実力のある選手がチームを去っていたからだろう。下に選手・年齢と2019年度の主な結果を記す。

 ○佐野広明(33):東京マラソン2020 2:24:08

 ○上野 涉(30):10000m28:34:72 東日本実業団駅伝5区3位

 ○服部翔大(29):5000m14:12:89 東日本実業団駅伝7区4位

 →日立物流へ移籍

 ○新庄翔大(28):10000m29:19:33

 ○アモス・キルイ(22):3000mSC8:17:07 ニューイヤー駅伝2区31位

 国際大会の経験もある大ベテラン佐野選手の引退はともかく、他のメンバーについては「まだやれる」という印象を抱くファンも少なくないだろう。特に上野選手は年度内に28分台をマークしながらの現役引退となった。

 また、服部選手については日体大時代の恩師・別府健至氏が今年度から監督を務める日立物流に移籍ということで、こちらも大いに注目を集めた要因となった。

 一方で、新入部員は例年より少し多めの大卒選手3人(法政大・青木涼真、東国大・伊藤達彦、國學院大・土方英和)およびインターナショナル選手2人(ソゲット・カベサ)となっている。

 これらを踏まえ、以前の記事と同様に年齢分析を試みる。

このようになり、インターナショナル選手を除くと昨年度とほぼ変わらない年齢構成が実現されることがわかる。つまり、大鉈を振るっているように見えて、チームとしてはいたって健全で理にかなった新陳代謝であることがうかがえる。一方で、現役を続けることの難しさを逆説的に示しているデータとも捉えられるだろう。

 

2 日立物流は「過渡期」を迎える

 一方で服部選手を迎え入れた日立物流は、新人のリクルートも3名と多く、引退選手も柳選手(27)のみで、全体の年齢層も上がってきた。

 こちらの年齢分布は下記のようになっている。こちらは比較対象として、年齢分布が比較的近かった昨年度のトヨタ自動車のデータを加えた。

※2019トヨタ自動車在籍のコシンペイ選手は23歳世代に該当

 

 昨年度のトヨタ自動車については、他の実業団と比べ中堅選手の人数が多く一見世代交代がうまくいっていないように見られたが、実際には28〜31歳の中堅選手が勝負レースで安定した結果を残しつつ、実力を伸ばした若手(堀尾・西山選手など)を試しながら戦うというサイクルを確立させていたように見え、いわゆる世代交代の「過渡期」と言えるシーズンを送った。

 同じように日立物流もチームとしての「過渡期」を迎えそうで、トヨタのようなチームとしてのサイクルを確立できれば、将来的に関東中位からの脱却・躍進が期待できるのではないだろうか。中堅どころのピーキング・若手の育成の両面で別府監督の手腕が問われることとなる。

 

 次回は、近年リクルート方針をガラリと変えた「関西の飛脚屋さん」の分析を行っていく予定。