〼(ます)健の備忘録

置き去りにしてしまいそうな好奇心を残せたら良いな。

長距離の、ファンはいかにして作られうるのか②

 前回エントリの続きです。コロナショックの間の暇つぶしになれば幸いでございます。

ーー

【新たな課題の設定】

 前回のエントリから、陸上長距離のファン層は「特定の人に魅力を感じる」人が多く、それゆえに、柏原竜二の登場以降ファンになった層も少なくないのだろう。

 ただ、もう少しツイートに分析を加える。まず注目する点として、

「選手の属しているコミュニティ(大学、地域など。以降、これを「ハコ」と呼ぶこととする)に自身や近しい人(家族など)が属することがきっかけでレースをぼんやりと見るようになり、そこから特定の選手を追いかけてファンになる」

という、ファンの視点変化がうかがえるツイートが散見されたことがある。このツイートについては単に前回記事③(特定の選手・スタッフが好き)として集計したが、これについても検証を行なっていく。

 なお、検証方法については、前回エントリでの調査方法と同じなので割愛する。

 

【結果】

 ③総数:94

 ③のうち、「ハコから選手へ」への視点変化のあるもの:11(約11.7%)

 【「ハコ」種類内訳】

 ・地域 5件

 ・高校、大学および実業団 6件

 となり、先の仮説はそこまで妥当ではないことがわかった。

 

【考察と課題】

 ここで、これまでのデータを踏まえて何が言えそうかを考えていく。以前のブログの内容のおさらいとなるが、

・特定チームから 22

・特定選手から 94(うち、視点変化を伴うもの11件)

 うち、柏原竜二選手を含むもの 38

 となった。やはりこうしてみると、「スター選手、気になる選手の存在」がファンの入り口となっているのだろう。これは他のスポーツで例えると、野球のことをあまり知らない人であっても「山田哲人」「大谷翔平」は知っていて、そこから各球団のファンになって野球を好きになる、という感覚なのだろう。

 一方で、「憧れのチーム、おなじみのチーム」が入り口になることは、「スター選手」より明らかに少ない。とはいえこれは陸上選手の主要な活動母体が母集団の小さい「学校・実業団」であり、母集団がより大きい「地域」を母体にしていることが少ないからだと思われる。(ただし、「駅伝大好き」トヨタグループの膝元である愛知県豊田市や、旭化成陸上部を地域ぐるみで応援している宮崎県延岡市などの事例もあり、こういった地域のデータが確認されていないことは考慮すべきである)こちらも野球を例え話にすると、広島東洋カープが広島を活動拠点とし、街にはカープのスター選手の掲示物が溢れ、広島県民が自然とカープを知り、応援する、という感覚なのだろうが、こうしたものが陸上では少ない、ということと推察できる。

 つまり、ハコ単位でのファン獲得が難しいため、「スター選手、気になる選手」として選手を認知させること、これがファンを増やすことにつながるだろうし、ひいては「選手としてこの舞台に立ちたい」という憧憬を呼び起こす可能性もある。陸上競技の世界においては、この「スター選手の認知」にかかる比重が極めて高いと読み取れる。

 

【柏原選手が蒔いた種に水をやった名将】

 とは言え、本調査のTwitterにおいてファンになったきっかけの大多数をしめた「柏原選手」はもうすでに現役を退いていることから「恒久的に認知してもらう」ための方法論は必須と言えよう。だが、このことを自覚して発信、行動を行なっている陸上関係者がいる。ご存知、原晋監督(青山学院大学)である。原監督は、「陸上界の盛り上がり」を標榜し積極的なメディア展開や優勝祝賀パレードなどのファンサービスの実施を推進している。

https://hochi.news/articles/20200125-OHT1T50083.html

(このように学生や実業団ランナーをプロと同様に扱うことにより発生する負の影響は考察すればあるだろうが、ここでは考えないとする)

 

——

 結局のところ、原監督のメディア戦略の妥当性を補強するだけ、という結果になってしまいましたが、考察を終わりたいと思います。

 まだまだ深掘りできる要素があるので、不定期シリーズものとして更新があるかもしれません。よしなに。

 

 みなさんがファンになった、陸上選手になった、きっかけは何ですか?