〼(ます)健の備忘録

置き去りにしてしまいそうな好奇心を残せたら良いな。

國學院ファン目線で綴る観戦記:復路編

(執筆のいきさつ、往路レビューは前回の記事を参照のこと)

 

3:危険水準からの脱出

復路:島崎−徳備−伊地知−高嶌−木付


 「いい感じなんだろうけど7区10区は逆じゃないかい…?」というのが正直な感想だった。


 6区島崎選手は、シードライン上で闘う大学にあって数少ない経験者で、まずはここでシードラインを大きく引き離し、前との差を詰める計算が立つのはとても安心感があった。そして10区木付選手のところもシード争いを見据えれば稼ぐ区間になるだろうと思った。

 しかし、で、ある。7区以降を見ると

11位 早稲田 宍倉−千明−小指−山口

12位 青山学院 近藤−岩見−飯田−中倉

14位 明治 手嶋−大保−富田−長倉

 この上位3校が上がってくるのは安易に予想できた。この大学群シードラインから上位を伺うのは本当に怖かった。しかも明治は14位とはいえ6区に経験者・前田選手、7区にエースの手嶋選手まで擁しているとあっては、確実に早いうちに逃げきれなくては厳しいと感じた。徳備、伊地知、高嶌選手がシードラインで堪えられるよう祈るしかなかった。


 そして始まった復路。


 6区の島崎選手はもうさすがの走りという他なかった。定点順位でずっと3位につけ、下りきる頃には神奈川・東京国際の2校を射程圏内に捉えていた。拓殖は遥か後方。神奈川、東京国際、拓殖で3校、ここを後ろにすれば安全圏、そう目算を立てた。

 そして小田原ではその2校ではなく、帝京を抜いていた。帝京の下りの三原選手の疲労骨折を知らなかったため、驚きとともにラッキーだと感じた。しかしあそこの8区は2区でも走れる実力者の鳥飼選手(もっとも、本調子ではなさそうだったが)、ここは抜いてもノーカンだ、そう感じた。58分30秒台のタイムで島崎選手が中継。100点満点。本人は区間賞を逃したことに悔いを残しているだろうが、今西・小野田選手クラスの走りを相手にされては仕方ない。

 

さあ、ここからどうなるか、胃が痛い復路平地が始まる…


 7区・徳備選手は前田監督が太鼓判を押していた選手、この大会は全体的に前田監督の太鼓判がかなり信用できる(臼井・殿地・島崎選手)ので期待はできる、が、如何せん相手が悪いように感じていた。案の定、青学の近藤選手にはあっさり抜かれてしまう。宍倉、手嶋選手ももう怖い…が、徳備選手の本領発揮は、ここからだった。

 二宮の定点では神奈川大を抜いて区間6位、大磯でもそのまま堅調に推移して、最終的には区間7位、順位を守り、宍倉・手嶋選手にタイムで勝る。ハーフマラソン69分台ながら今季好調、ラストランの秘密兵器が面目躍如の走りだった。


 8区は筆者が大きな期待を寄せるルーキー・伊地知選手。

 この選手、入学時タイムは14分40秒台で、都大路都道府県も知らない選手。しかし、卒業前ローカル駅伝(県駅伝・奥むさし駅伝)で、今年駒澤の1区を走った白鳥選手には2度勝っており、入学後の自粛期間も藤木・大翔・臼井選手と肩を並べて練習し、5000mで大幅自己新とあって、他大のスーパールーキーとも遜色ない実力を有している(と、個人的に思っている)大器だ。

 とはいえ、茅ヶ崎の定点では区間順位が上がらず、後ろからは予想通り前述した帝京の実力者・鳥飼選手が追いついて並走となっていた。どこまでついていけるか、期待と不安が交差した。そして遊行寺坂では早稲田のこれまた実力者、千明選手が迫っていた。しばらくカメラが途切れ、一時鳥飼選手に切り離されたように見えた、が、次にカメラが回っていた時には逆に鳥飼選手を突き放す。だらだら登る難所、影取でのクレバーな走りで区間9位、8位で中継した。おいおい全日本の7区や8区、箱根の2区や4区、5区といったタフな主要区間を担ってほしい、そんな存在だと改めて思った。


 9区は昨年、殿地選手というヒーロー誕生の陰で、10区出走を譲り涙を流していたであろう高嶌選手。個人的な目算としては95回大会の長谷選手(区間12位、71分少し)くらい走れるかなあと感じていた。

 とはいえ高嶌選手がゆっくり入った事(権太坂定点ではかなり区間順位が悪かった)に加え、後続の恐れていた大学群、帝京・早稲田・明治が迫ってきたことで、いよいよ胃痛のする展開へ。帝京、早稲田に切り離され、明治の富田選手にも抜かれて、いよいよ黄色信号かと感じた。

 が、この選手もこれまでの選手同様、力を溜めていた。CM明けにカメラが切り替わると、明大を抜き返し、さらに東京国際も抜いていたという展開が待っていた。これはもうシード権安全圏に逃げ込んだだろ、そう思い両の手を叩いて喜んだ。結局総合9位、区間12位で71分ちょうどということで、筆者の目算と同じような形の結果となった。


 復路平地、9区までの三選手は、後ろから有力選手が迫る展開にあっても、「前半抑え、後半で勝負」という、駅伝の王道ともいえる粘りの走りを見せていたことが改めて見えた。これを徹底できる地力を培ったが故に、シード安全圏へ逃げ込めたとも言えるだろう。


4:2カ年計画後半戦へ向けて


 シード権は安泰、あとはどこまで上げていけるかに注目した10区だったが、木付選手は期待に違わぬ走りを見せた。


 雑誌によれば貧血に喘いでいたようだが、それでも血のにじむ努力で大きくした身体で、攻め倒す気迫が伝わるレースだった。定点タイムではこれまた激走を見せた石川選手(駒澤)と遜色ないタイムを叩き出し、新八つ山橋の定点では前をいく順天堂・帝京・早稲田がなんと射程圏内に入っていた。そして3人集団にカメラが回った時に後ろにチラチラ見える木付選手。まさしく昨年の、殿地選手の大快走と同じ光景を見るようだった。

 その後は前述の石川選手のドラマチックな逆転劇がずっと映され、追いついてからの走りが映る事はなく、終わってみれば6位集団に肉薄して9位、区間3位でフィニッシュ。

 現場は本気で3位を狙っていたようで悔しさも残るだろうが、それでも下馬評はシード権争いでまだまだこれからのチームという感じだったのだから、ファン目線でいえば上出来とも言える。


 最後に、来年度に向けて。

 

 来年度は箱根駅伝経験者が6人残る。

 さらに下にあげるような選手に代表される持ちタイム・実績のあるルーキーも多く入ってくる。

 ・山本歩夢(自由ヶ丘)13:48:89 2年時都大路1区23位

 ・平林清澄(美方高校)14:03:41 2年時都大路1区22位

 ・中川雄太(秋田工業)14:04:93 2年時都大路1区10位 3年時都大路1区14位

 ・青木洸生(青森山田)14:15:72 3年時都大路4区10位

 ・田邊優太(藤沢翔陵)14:16:80

 ・佐藤快成(埼玉栄高)14:23:03 2年時都大路3区4位

 故障や都大路へのチーム不出場、都道府県駅伝の中止のため、ラストシーズンの大舞台で眩い輝きを見せる事は叶わなかっただろうが、いずれも劣らぬ大器だと感じる。持ちタイム中位〜下位の選手でも大きなポテンシャルを持っている可能性がある。

 一方で今季1人ずつしか出番がなかった新2年生、3年生についても、今はくすぶっていても持ちタイムを持っている選手や、監督から大きな期待を受けている選手はあげればキリのないほどいる。

 とにもかくにも、こうした選手が切磋琢磨し、大きく強い「柱」と呼べるような選手がこれから増えていくこと、これが「2ヵ年計画の集大成」「勝負の年」に戴冠する上で一つ大事になってくるだろう。まずはこれを切に願っている。


 そして今季走った選手についても、藤木・大翔選手という2大エースが今年の箱根路の雪辱を果たす活躍をすること、殿地・島崎選手が更に上の成績を狙えるほど大きくなること、伊地知選手が第3のエースになること、木付選手のキャプテンシーが走り、チームビルディング両面で発揮されること。

 これらの事項が多く叶うことを楽しみに、今後も1ファンとして注目・応援を続けていきたいと〆て、筆を置くこととする。