〼(ます)健の備忘録

置き去りにしてしまいそうな好奇心を残せたら良いな。

箱根駅伝最終走にかえて〜箱根路を走った選手たち②〜

 前回記事の続きから。後編では、黄金世代の顔とも言える、持ちタイム上位の選手を紹介します。

ーー

f:id:masdan1031:20200105171148p:plain

 まず目を引くのは今年の箱根駅伝で1区を走り区間賞を獲得した創価・米満選手。1年時から「故障は多いが走れば強い」を地で行く選手でしたが、4年になり通年走れるようになってから、28分30秒台を叩き出すなど更に上のステージへ行った印象です。優秀の美といえば中央・二井選手も、1年時に28分台を出してからは思うように走れず…その後4年生になってから徐々に復活し、区間6位で走れるまでになりました。順大・小畠選手も4年時に花を咲かせた選手です。

 そして今年の箱根駅伝で帝京の核となる区間を担った岩佐・島貫・平田トリオ。岩佐選手は持ち前の安定感でチームを締めていた印象のあるランナー。島貫選手はトラックから、平田選手はロードから台頭しましたが、最終学年では2人とも、「どちらでもいける」選手に成長したように思います。最後の山だけうまくいかなかったリベンジは実業団で果たしてくれれば。

 法政・岡原選手は最後の箱根は最下位からのスタート、日大金子選手と日体大中川選手は、最後の箱根では奇しくも一斉スタートで並走することになってしまいました。が、4年間の貢献度は各大学ファンも認めるところ、そんなランナーたちでした。

f:id:masdan1031:20200105171210p:plain

 インパクトでいえば中央・舟津選手が一番でしょう。凋落しゆく中央大学で「1年主将」を任され、箱根予選会落ちと涙のスピーチを経て、1年で自身もチームも強くなって復活。その後も紆余曲折ありながらチームをまとめ、藤原中大を象徴する存在になりました。一選手としては日本有数の中距離ランナーでもあるので、実業団ではスピードを磨いていってほしいところ。この持ちタイム帯では他にも拓殖の日本人エースの系譜を継ぐ赤崎選手、3年時から驚異的な成長曲線を見せた順天堂の藤曲選手、全日本大学駅伝予選などトラックでの勝負強さが印象的な日大・松木選手が主将経験者です。

 そして早い段階からチームの主力になった選手も多いです。法政・佐藤選手は山下りから台頭し、3年時からは平地でも実力を伸ばし、4年時は相澤選手にも勝ったランナー。怪我が悔やまれます。同じく上級生になってからの怪我が悔やまれるのは中央学院・藤田選手ですね。一方で日体大・山口選手は4年間結果を残し続け、押しも押されもしないエースになりました。

 山梨学院・中村選手は3年時から台頭した選手。ロードから台頭した選手だったため、いきなりスピード区間の3区は厳しかったのか。そして忘れてはいけないのが青学・吉田祐選手。アップダウンでの強さにもともと定評があったものの、箱根はなかなか縁がなく…迎えた最後の箱根4区でとんでもない区間新を叩き出したことで、努力が報われた形になりました。

f:id:masdan1031:20200105171231p:plain

 ここで金栗杯獲得者が登場、東海・小松選手。3年時にようやく掴んだデビュー戦で、並走する東洋の選手を競り潰して「最古の区間記録」を塗り替え、時の人になりました。4年時はその時より難しい展開になりましたが、それでも区間賞を取ったあたりは流石でしょう。

 他は「準エース」的な立ち位置の選手たち。國學院の鬼門・3区を締めた青木選手、順天堂の準エーストリオを形成したハチマキ橋本選手と野田選手、3年時に輝きを放った日体大のスーパーユーティリティ𢌞谷選手、2年時の神大の大躍進を安定感で支えた安田選手、東京国際のスピード区間を担った真船選手ら、チームの躍進にこの選手ありという選手が多いです。

 また、スピードに定評にある選手として明治・河村選手と中央・冨原選手がいます。冨原選手は上級生になってから苦労しましたが、河村選手は上級生になってから距離にも対応し花開く、と、好対照です。

 川澄選手は3年時までには紛れもなく大東のエースとなった選手。しかし、箱根駅伝2区を走って以降、原因不明の不調に喘ぎました。焦らず復活を待ちたい選手です。

f:id:masdan1031:20200105171326p:plain

 この持ちタイム帯に入って、「東海大学・黄金世代」の顔が増えてきましたね。爆発力は世代トップクラスの東海・阪口選手は故障こそ多かったものの出雲駅伝1区、箱根駅伝7区で優勝を力強く導く走りが印象的でした。郡司選手は長い距離・ロードに強みを持つ選手、中島選手は山下りの名手として東海の箱根初制覇のコアメンバーになりました。中島選手は4年時の苦悩する姿も印象的でした。こちらも焦らず復活を待ちたい選手です。

 神大もこの持ちタイム帯の選手に躍進期のコアメンバーがいます。越川選手・荻野選手ともにスピードのある選手で全日本大学駅伝の優勝に貢献。しかし期待された2年時の箱根は荻野選手が洗礼を浴びました。それ以降、両選手とも長い距離でのたくましさを身につけていった印象です。

 前述の中島・荻野選手らもそうですが、山に縁のある選手が多いのも特徴的で、法政・坪井選手、駒大・中村大成選手は各大の山下りを担ってきた選手、駒大・大坪選手は登りに挑みましたが苦戦しました。

 青学のキャプテン・鈴木選手はダメダメ世代と称された世代のキャプテン、苦悩しながらもチームをまとめ、青学の覇権奪回に尽力した姿は印象的でしたね。

f:id:masdan1031:20200105171348p:plain

※ムイル選手はデビュー戦のタイムを使用

 ここでようやく鉄紺の箱根戦士が現れました。今西選手は山下りの快走が印象的ですが、他の駅伝でも難しい位置からの追い上げで力を発揮する駅伝男でした。また、「人間じゃねえ」などの迷言も多く残し、ファンから愛された選手でもありました。もう一人、渡邉選手は1年時から28分台を出すなど中軸を担う予感はあり、2年時の全日本大学駅伝など光る走りもあった選手ですが、怪我に苦しんだ印象です。まずは怪我を治してほしいところ。

 東海の黄金世代ではユーティリティ・松尾選手がいます。ハーフマラソン62分台を安定して出し続け、箱根5区や全日本7区など難しい区間をまとめる姿が印象的な選手でした。

 創価・ムイル選手と早稲田・太田選手、大東・奈良選手は苦しみながらもチームを牽引した選手でした。ムイル選手は全日本大学駅伝予選会でのまさかの途中棄権でどうなるかと思いましたが、すぐに立ち直るとクレバーな走りで創価の躍進に貢献。その後も順調にタイムを伸ばし、他の外国籍選手と遜色ない選手になりました。太田選手は2年時までにエースの階段を順調に登っていましたが、3年時の故障と箱根駅伝・華の2区で辛酸を舐めました。しかしそこから4年時は復活を遂げました。奈良選手は父子鷹で注目されながらもなかなか結果を残せず、そんな中3年時の箱根駅伝4区で見せた、チームの窮地を救う走りが印象的でした。

 明治・中央学院の選手らは怪我に苦しみ続けたような。明治の三輪、中島選手はチームの主力として4区を走り、特に三輪選手の3年時の快走を覚えているファンは多いはずです。中島選手は順調な時期とチームの底が被ってしまったのが惜しまれる選手です。中央学院・横川選手はハチマキ姿と積極果敢な走りが印象的な選手で、復活が待たれます。高砂選手は「走れば強い」の体現者という印象です。部を離れてしまいましたが、第二の道で頑張ってほしいものです。

f:id:masdan1031:20200105171537p:plain

 「黄金世代」の顔となる選手がずらりと並ぶ持ちタイム帯。やはり印象的なのは東海大の4人。鬼塚選手は1区主戦場の選手でしたね。末脚の強さと本番前の高い調整能力で東海大学を支え続けました。西川選手は崩れない安定感で順位変動の激しい前半区間を担った選手。競技以外の面では最終年度に苦しんだ館沢選手に代わり部を纏めた姿も印象的です。館沢選手は1500mで2度日本一になるなど中距離が主戦場の選手。駅伝では東海大のゲームチェンジャーとして、序盤から飛ばしに飛ばして粘り切る走りでファンの心を掴みました。そして關選手。勝負勘の鋭い選手で、出雲駅伝全日本大学駅伝では競り合いに強いところを見せた印象です。箱根駅伝最終走が1年時の2区になってしまったのが惜しまれます。実業団で復活を待ちたいですね。

 順大・難波選手と早稲田の新迫選手は、高い能力を駅伝になかなか還元できずに苦しんでいた印象です。難波選手は関東インカレハーフマラソンで入賞するなどロードの力は一線級で、マラソン挑戦が楽しみな選手です。新迫選手はトラックのスピードがある選手でトラックから台頭。箱根は少し適性とは違う印象のある9区を任されましたが、いい走りを見せてくれました。

 青学と駒澤のW中村選手は上級生になってようやく出てきた選手、駒澤の中村選手は「なかむらたいせい」コンビの名前ネタが先行していた印象ですが、3年時の箱根駅伝を3区5位で走ったことで走りでも力のあることを示し、その勢いのまま日の丸を背負いました。4年時の駅伝では苦戦しましたが、頼もしいエースになりました。青学中村選手はマネージャー転向も打診された中で覚悟を持って能力を伸ばし、三大駅伝全出走を果たしました。スピード型の選手という印象がありましたが、実際には後半区間で淡々と刻む走りが得意な選手でしたね。

 最後に紹介するのは学生の域を超えた走りを見せた阿部・相澤選手。阿部選手はもともとトラックに強みを持ち、現役学生唯一の27分台ランナーになりました。それが2年時の全日本大学駅伝旧7区区間新からロードでも実力を発揮しだし、最後の箱根は区間新で締めました。その阿部選手の高校時代からの戦友、東洋・相澤選手は逆にロードの強さが光る選手。いきなり箱根駅伝・華の2区で区間3位を叩き出したのにはびっくりしました。その後もユニバーシアードハーフ優勝、3年時の箱根駅伝4区から3連続区間新、4年時の箱根はあのモグスの記録を破る記録を叩き出し、「学生最強」の称号をほしいままにしました。卒業後のマラソン挑戦が今から楽しみな選手です。

 ーー

 こうした個性豊かな「黄金世代」の戦いに敬意を表し、このあたりで筆をおきます。お疲れ様でした!