箱根駅伝振り返り①青山学院の勝因は?
今更ながら箱根駅伝を振り返っていくのだが、結果の羅列というよりは、テーマ別に振り返っていこうと思う。
まずは「青山学院大学がなぜ往路・総合優勝を取れたのか」、ということについて、往路優勝を狙った國學院・連覇を狙った東海との「差がついた」ポイントを中心に語っていく。
【区間別リザルト】
※下線は「予想が的中した」区間
1位 青山学院大学
吉田圭(7)—岸本(5)—鈴木(4)—吉田祐(1新)—飯田(2新)
谷野(3)—中村(4)—岩見(2)—神林(1)—湯原(5)
2位 東海大学
鬼塚(4)—塩澤(7)—西川(6)—名取(2)—西田(7)
館沢(1新)—松崎(3)—小松(1)—松尾(8)—郡司(3)
3位 國學院大學
藤木(2)—土方(8)—青木(5)—中西大(3)—浦野(3新)
島崎(8)—木付(11)—河東(7)—茂原(19)—殿地(4)
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青山学院の優勝に終わった箱根駅伝、往路では「往路優勝・大本命」と謳われた國學院の猛追をはねのけ、復路は「黄金世代」東海大の追撃を振り切った。その勝負を分けたポイントについて、自分なりの見解を述べていこうと思う。
①往路の稼ぎどころで攻め倒した4年生の勇気
往路2区まででは、青山学院と、往路優勝を争う東海・國學院との差はあまりなかった。この段階では往路優勝はどうなるか全く予想できなかった。しかし、その後の区間3区・4区で大きく差がつき、青学優位に働いた。その理由として、まず3区鈴木と4区吉田祐2人の「飛ばす勇気」をあげ、称えたい。
箱根本戦では、東海3区・西川が出入りの激しい展開でも動じずマイラップを刻む「仕事人」の面目躍如と言える走りを見せ、國學院4区・中西は1年生離れしたクレバーな走りを披露した。しかし、それが「飛ばす勇気」を持って最初からハイペースで飛ばした鈴木・吉田祐の戦略を前に裏目に出た、という印象を持った。
もちろん、後半に垂れてしまっては「勇気」は無謀に変わっていただろうが、青学の調整の上手さ、気候や靴の特性といった外的要因も合わさり「飛ばして粘り切る」ことができたため結実した作戦とも言えるだろう。
②飯田の山適性・メンタル
そして5区、東海・國學院ともにクライマーには絶対の自信を持ち、特に國學院・浦野については「2分なら捲れる」というコメントもあった程。そういった後方からのプレッシャーに耐え、自分のペースで山を登り、大平台までで差を詰めさせなかった青学5区・飯田の山適性とメンタル。これはもちろん往路優勝に不可欠な要素だった。更に言えば、来年は東海・西田が残るため、この逃げ切り経験が来年の「往路優勝・総合優勝」に向けて大きな財産になってくるのではないだろうか。
③岩見の「克己」
復路での勝因・すなわち総合優勝の勝因は岩見の走りによるところが非常に大きいと見る。というのも、東海大学は6区で館沢がジョーカー的走りを見せて1分以上差を詰め、7区松崎もルーキー離れした走りで20秒ほど詰め、東海に流れが傾きかけた中で、青山学院に流れを戻す役割を担ったからである。
更にシチュエーションだけ見ると、「「追いかけてくる東海・小松は8区のレコードホルダー」ということで、昨年度、東洋相澤に競り潰された嫌な思い出がフラッシュバックしてもおかしくなかった場面。しかし岩見は序盤から他の青学の選手同様、勇気を持って入り、東海・小松のビルドアップにも耐え切った。
この区間で1分差以内まで詰め寄られたら、9区・10区での逆転も大いに考えられた場面で、1秒しか縮めさせなかったことは、岩見の中でも大事な「成功体験」になるのではないか。
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上記から、青山学院の優勝の要因は
・序盤の勝負どころを見極め突っ込む勇気
(3区・鈴木、4区・吉田祐)
・ライバルチームのエンドカードを凌ぐ選手のメンタル
(5区・飯田、8区・岩見)
の2点に集約されるのではないか。
そして、来年度の話をするのであれば、青山学院は優勝を決定づけた4年生がいなくなるとは言え「勇気ある突っ込み」を敢行できる選手が数多く控える一方で、東海・國學院はともに今大会屈指のエンドカードを失うため、往路優勝・総合優勝ともに青山学院が優位に立つのではないかと考える。
とは言え、東海大は現3年生の柱名取・塩澤・西田は十分にエンドカードとしての役割を期待できるため、来年度も青山の対抗としての地位は保つはずだ。國學院については現2年世代に覚醒の予感が漂い、近いうちにまた台風の目になる可能性があるので、引き続き注目すべきチームと言える。