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出雲駅伝レビュー2019-トップ10+α各チーム編–

今年の出雲駅伝は「史上最高の優勝争い」と言って間違いない結果になったように思える。そこで、この駅伝のレビュー記事と大学別MVPを勝手に紹介していく。

 

1位:國學院大學

藤木(5)-中西大(3)-浦野(3新)-青木(5)-茂原(5)-土方(1日本人新)

 優勝の可能性はあるとは考えたものの、あそこまで劇的な優勝は考えられなかった…藤木・中西の下級生1区2区でうまく上位につけ、浦野が3区エースパックを「支配」しようと言わんばかりの積極的な走りで2位に上がる。その後4区青木5区茂原が先頭から離された時には優勝は厳しいと思っていたが、土方の6区日本人新記録の激走で見事優勝。

 実はエースを6区においていたのはここと2位の駒澤くらい。やはり出雲駅伝はエース力がモノを言うことをまざまざと見せつけた結果といえよう。もちろん、6区にエースを置いてなお5区までいい位置をキープできた他のメンバーの頑張りも見逃せない。このままいい流れを継続したいところ。

MVP:土方(6区)

 数少ない「6区エース」として、前にいる主力級を食ったのみならず、駒澤の中村大聖とのエース対決に打ち勝ったのは非常に大きい。文句なしのMVPだろう。

 

2位:駒澤大学

山下(2)-伊東(4)-田澤(2新)-小林(3新)-大成(2)-大聖(4)

 5区までは優勝濃厚とみるファンは多かったはず。やや驚きの1区山下が区間2位となり、どんな展開でも対応できることを実証した。その後も新戦力の田澤・小林を含め4区までずっと先頭〜先頭付近で戦い、そして5区大成でトップに立ち、数少ない6区エースの大聖がウィニングランか、と思ったが、土方の大快走の前に力尽きた格好になった。とは言え、6区走破タイムは宇賀地(現・コニカプレイングコーチ)並であり、力があることは示した。

 田澤・小林の2人だけでも十分お釣りが来るほどの収穫となった。全日本・箱根では今回走れなかったメンバーを含めた層の厚さで勝負できそうだ。

MVP:田澤(3区)

 小林と迷ったが、相澤・浦野・吉田らで形成されたエースパックで遅れることなく、むしろその力を利用して最後に飛び出すしたたかさを見せた田澤をMVPとした。将来的には中村山・窪田に匹敵する藤色のエースになれる予感を漂わせた走りには舌を巻いた。

 

3位:東洋大学

西山(10)-大澤(2)-相澤(1新)-宮下(4)-今西(2)-定方(3)

 「負けてなお強し」という言葉がそのまま当てはまるような結果となった。1区西山は区間成績こそ振るわなかったものの前が見える位置でまとめると、2区大澤が箱根10区から一皮向けた走りを見せ、相澤が流石の走りで先頭集団合流&区間新。その後も、宮下定方という関東インカレハーフ組が健闘し、5区状態が心配された今西も復調をアピールした。

 ここに実績のある吉川・渡邊や、関カレハーフ組の一人蝦夷森が加わるとなると、より得意な全日本・箱根ではさらに順位を上げてくるだろう。

MVP:大澤(2区)

 この男が最短区間とはいえ「終始単独で追っての区間2位」をとったことで、主要区間のオプションが一枚増えたことが今の東洋にとっていちばんの収穫なのではないかと考え、MVPとした。全日本以降の起用方法に注目したい。

 

4位:東海大学

西川(4)-阪口(6)-塩澤(6新)-市村(2新)-鬼塚(4)-西田(2)

 現状のベストとも言える布陣を敷いたが、よくも悪くも無難に纏まったという印象が強かった。1区西川がまずまずの位置で渡したが、2区一気に抜け出したかったはずの阪口が伸び切らず、そこからは単独走になる時間が多く自慢のスピードを生かしきれなかったように見えた。その中でも4区・市村の好走と6区・西田の攻めの姿勢は次に繋がるか。

 今回不調・未出走に終わった「黄金世代」メンバーが、まずはしっかりと状態を上げて行くことが、これからの逆襲には不可欠。まずはしっかり状態を整えて欲しいところ。

MVP:市村(4区)

 先頭集団が見えるもののなかなか追いつかない難しい展開の中、落ち着いた走りで区間新の好走を見せた。こういった下級生の突き上げが出雲駅伝から見られたことは収穫だろう。

 

5位:青山学院大学

湯原(7)-岸本(1)-吉田(4新)-神林(1新)-竹石(6)-中村(5)

 4区までは「また青山か」と思ってしまった。それくらい見事なレースを展開したように思う。1区湯原は最低限の位置でつなぐと、大学駅伝デビュー戦の岸本が区間賞で上位集団につける。3区吉田がエース対決をがっぷり四つで戦い、4区神林で抜け出したところで青山学院のしたたかさを感じた。竹石が少しうまくいかなかったところで流れを駒澤に渡し、6区抜擢の中村は力負けをする格好となった。

 とはいえ、岸本と神林の台頭は大きな収穫で、中村も繋ぎ区間であれば目処がたった。今期前半の底は脱したように映った。

MVP:岸本(2区)

 1年生にして一気に2位集団に合流しその後も攻めの走りで区間賞を獲得したことで、指揮官が渇望する「駅伝男」に名乗りを上げた。これからの戦いでは主要区間を任される可能性が高くなってくるだろう。

 

6位:立命館大学

高畑(6)-前川(12)-今井(8)-山田(6)-岡田(8)-吉岡(6)

 見事な関東喰いを見せたのがこの立命館。高畑が6位と好発進を見せると、2区前川が少し足踏みするも、前回も見事な走りを見せた今井が区間新に迫る走りで追撃態勢を整え、4区ルーキー山田が2人抜き。その後の2人も単独走区間が多かったとはいえしっかり走り6位に。関東の大学を5校も喰うこととなった。

 出雲駅伝は優勝を狙わない関東の大学は「新戦力のテスト」の場と位置付けることも多く、関東勢がしっかり調整して臨む全日本でこの真価が問われることになるだろう。が、今回の結果と「もう一つの出雲駅伝」での自己新ラッシュを見ると、全日本でも期待が持てる。

MVP:山田(4区)

 立命館期待のルーキーとして元々注目されていて、14分10秒台まで持ち記録を伸ばした大器。4区で2人抜きを達成し上々の駅伝デビューを果たし、今後は主要区間での活躍も期待される。

 

7位:帝京大学

平田(9)-遠藤(9)-小森(10)-谷村(9)-小野寺(1)-中村(13)

 日体大5000mの好記録ラッシュ時にピークが前倒しされてしまったような、そんな印象を受けた。1区平田がまずまずの位置で渡したものの、2区大砲と目された遠藤が不発。そこから4区谷村までは低空飛行となったが、5区小野寺が区間賞をとって浮上、立命館とのマッチアップとなったが、6区中村が力尽きた。全日本まででどこまで修正できるか。

MVP:小野寺(5区)

 終始低空飛行に沈んだチームにあって、唯一区間賞の好走。アップダウンの多い5区での受賞とあって、やはり登りの能力は高いようだ。箱根の山でのリベンジもあるだろうか。

 

8位:順天堂大学

野口(11)-藤曲(8)-橋本(9)-小島(11)-野村(13)-澤藤(9)

  2区藤曲はやはり調子が良くないことの表れだったか、という印象だったが、それ以外の区間はいい形で経験が積めたのではないか。野口は一度3位集団から遅れたものの以前より粘れることを見せ、橋本・澤藤は主要区間で健闘した。小島・野村もひとまずは駅伝を経験することとなった。とはいえ戦力の底上げはまだ必要な印象を抱いた。

MVP:橋本(3区)

 難しい展開の中での3区で、6位にまで順位を上げる走りを見せた。元々「メガネ」が特徴的だったランナーが「ハチマキ」を巻き、心機一転といった走りで浮上を果たした。塩尻のいないチームでエースを継承できるか。

 

9位:拓殖大学

赤崎(3)-高橋(20)-レメティキ(5新)-竹蓋(8)-佐々木(9)-中井(10)

  実はここも収穫の多いチームだったのではないか。まず1区。これまでエースらしい走りがなかなかできなかった赤崎が1区で勇気を持って飛び出し、区間3位。2区高橋は後退するも、3区初駅伝のレメティキが区間新記録の走りで浮上すると、そこから区間1桁付近で、順位をあげながら繋ぎきった。吉原、清水、石川ら実績がある選手が戻って来れば面白いか。

MVP:赤崎(1区)

 まずは序盤牽制合戦によりスローダウンした3位集団から飛び出して引いた勇気を讃えたい。その上で、山下以外の先着を許さず3位で中継したことで、佐護から続く拓殖の歴代エースに勝るとも劣らない強さを印象づけた。

 

10位:法政大学

鎌田(14)-田辺(10)-青木(7)-人見(15)-清家(10)-河田(8)

  坪井まで欠いてしまっては仕方のない部分はあるが、出雲苦手は払拭できなかったか。1区期待の鎌田が出遅れ、田辺、青木が一時持ち直したが、そのあとの繋ぎがまたうまくいかなかったか。最後に河田が一年生ながら健闘したのは明るいニュースと言える。このチームもまずは岡原、坪井といった不出場の選手の状態を整えるところからスタートとなるだろうか。

MVP:河田(6区)

 難しい展開となった主要区間、6区であわや前の拓殖大を捉えんばかりの走りを披露した。厳しいチーム状況が続くようであれば、今年度中に主要区間の抜擢もありそうな予感漂う。

 

11位:中央学院大学

川村(8)-小島(5)-高橋(11)-吉田(7)-栗原(20)-長山(11)

  途中まではやりたい駅伝ができていたように見える。1区川村が粘り、2区ルーキー小島でジャンプアップ、3区高橋は他大のエースに力負けする部分はあったが粘りきり、4区吉田から反撃開始、と行きたいところだったが…栗原がアクシデントを心配させる走りで沈み、長山も本領発揮とはいかなかった。調子さえ合わせられれば戦えるところは示せたか。

MVP:小島(2区)

 8位スタートとなった2区で、「中央学院のエース」らしい積極果敢な走りを見せた。同じ世代の岸本、中西の後塵を拝する結果とはなったが、リベンジの機会はそう遠くなさそうだ。

 

12位:北海道学連選抜

グレ(1)-酒井(14)-宇野(13)-野村(14)-内生(18)-松舘(15)

  今回の出雲駅伝でレビューしないわけにはいかないだろう。言わずもがなグレの独走劇がインパクト大であった。が、それ以降、特に2区酒井、3区宇野選手も関東勢の追撃に負けず粘り切った印象を受けた。そこから先は流石に厳しかった印象を受けた。とはいえアイビーリーグ選抜など他の強豪から逃げ切った。来年も期待できる。

MVP:グレ(1区)

 最初から一人飛び出し、ずっと一人のまま区間新まであと十数秒というところまで走り切った。関東の大学の強豪留学生と渡り合えるレベルへの成長に期待がかかる。

 

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 各校別レビューはここまで。全体の考察は、また後日。