〼(ます)健の備忘録

置き去りにしてしまいそうな好奇心を残せたら良いな。

実業団年齢構成を分析してみた①

 本当は全日本の記事をエントリしようかと考えたが、中国実業団駅伝の結果を受け、

「もしかして中国電力というチームは、チームの新陳代謝がうまくいっていないのでは?」

というツイートをしたところ思いの外反響があったので、「実業団年齢別チャート」を作り、検証してみることとした。

 先に断っておくと、若手主体だから、ベテランが多いからということでチームの良し悪しを決めるものではないということ、また、この記事は「ニューイヤー駅伝を戦う」ことを念頭に置いていることに留意いただきたい。

 

○表の見方

 ・赤字は2019ニューイヤー駅伝出走

 ・年齢については年度満年齢

 ・()はプレイングコーチ

○「若手」「中堅」「ベテラン」の定義について

 大学駅伝が4年サイクルで選手が入れ替わることを鑑み、大学卒業から4年、8年をベースに世代を分割し、

 「若手」:26歳以下の選手

 「中堅」:27歳〜30歳の選手

 「ベテラン」:31歳以上の選手

 と定義する。

 

 

【中国地方】

 まずは事の発端となった中国地方から。

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※一部修正あり

※1:旧姓内田

 こうしてみると、近年力を伸ばしているマツダ中電工と問題の中国電力はやはり年齢構成に違いがあることが分かる。マツダ中電工は若手〜中堅前期の世代を戦力の中核として据えているのに対し、中国電力はそれより一回り上の中堅後期〜ベテランの選手に戦力が集中しているのが分かる。そしてもう一つのニューイヤー駅伝出走チームであるJFEについても、30歳以上の選手(大谷兄弟など)を戦力の中心に据えているものの、近年はリクルート(新人のみならず、伊原や斉藤といった移籍組を含む)を増やし若手・中堅の層の強化を図っていることが伺える。

 

【関東地方】

①東日本実業団1位〜5位

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  この表をみると、コニカミノルタ以外のチームは若手および中堅前期の選手を主戦力に据え、かつベテランも一定数いるという理想的な年齢バランスになっていることが伺える。ヤクルトも一見ベテランが多いように見えるが、駅伝で主として走っているのは若手であることがわかる。その中でも、Hondaがどちらかというと中堅前期(27、28歳)に戦力が集中していて、特に設楽悠太が日本トップクラスのランナーになったという点でチームとして円熟期に入っている様相がある。そのため、ニューイヤー駅伝優勝を狙うのであれば、今年度〜再来年度が絶好機なのではないだろうか。

 一方で、コニカミノルタはベテランに戦力が集中していること、加えて若手後期〜中堅前期の「ランナーとして脂の乗った世代」層が穴になっていることは気になるところだ。この要因としては、その世代に該当する設楽啓太や神野の退社の影響だろう。(もちろん彼らの選択は尊重されるべきである)今後駅伝を戦っていくことを考えると、ベテランたちが一線を退く前に、数多くリクルートした若手2年目までの選手がモノになるかが問われるだろう。加えて、この「穴」となる層に途中加入で加わった我那覇(元・日清食品)がどう活躍するかが、今後重要になってくると思われる。

 

②東日本実業団6位〜10位

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 この表をみると、6位の日立物流こそ前項で紹介した「若手および中堅前期が主戦力」というオーソドックスな年齢分布であるが、カネボウおよび小森コーポが面白い分布をしていることがわかる。この2社は「若手から中堅〜ベテラン前期まで満遍なく主力になっている」点で似通い、一度定着した主力が長く活躍できるような育成ができている、といっていいような印象を持った。(特にカネボウの大西、青木両選手が顕著か)カネボウおよび小森コーポの選手の息の長い活躍を見守りたいところだ。警視庁もカネボウ型の分布だが、メンバーの入れ替わりが分かりにくい実業団という点に留意する必要があるだろう。

 スバルもコニカミノルタと同じような年齢構成の歪さが見える構成になっている。(菊池や塩谷、廣田といった怪我がちな選手が多かったのが原因だとは思うが…)こちらも今年4名加入した新人をどこまで怪我なく伸ばせるか、が大事になってくるのではないだろうか。

 

③東日本実業団11位〜13位+富士通

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 八千代工業および富士通はオーソドックスな年齢分布といって良さそうだ。特に八千代工業は、穴となっていた「若手後期」の層にメシボーイこと丸山選手を迎え入れることができた点が意外と大きいのではないだろうか。

 プレス工業はベテランから高卒選手まで非常に年齢幅が広く、かつベテランが比較的主力となっていることがわかるが、これは高卒選手の育成ノウハウを持つ九州のいくつかの実業団でも見られる傾向であり、関東の実業団の中で比較すると異質に映る。これについては後程解説する。

 面白いのがコモディイイダ。若手主体で、かつ25歳世代が非常に多い。25歳世代の充実に関しては大学からのリクルート・他の実業団からの移籍受け入れに加え、特殊な経歴を持っている黒田選手がいるのが大きい。この世代が「脂の乗った年代」に入る頃にどんな集団になっているか、楽しみは尽きない。

 

④九州実業団・高卒選手積極スカウト型

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 九州の実業団は、伝統的に高卒選手をリクルートして長いスパンで育てる、という傾向があるが、近年は大卒選手のリクルートに舵を切る実業団も出ている。この項では高卒選手のリクルートに積極的な4社をまずは見てみる。

 駅伝では一部の有力ランナー(旭化成・茂木や黒崎播磨・田村など)を除いてあまり起用しない傾向にあり、その分中堅後期〜ベテランが主力を張っているように思える。戦力循環のスパンが、関東のオーソドックスな実業団より長いと言えそうだ。ひらまつ病院は近年参戦したチームだが、ベテランを途中加入させることでこうした「九州特有の」年齢層・戦力循環を再現しようとしているのではないだろうか。

 例外は旭化成。高卒選手の育成とベテランの長期戦力化については他の実業団と同じだが、手厚いリクルートによる有力選手のリクルートに成功しており、関東の実業団と九州の実業団のいいとこ取りをしているような年齢構成であることが伺える。

 

⑤九州実業団・大卒選手積極スカウト型

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 こちらは大卒のリクルートを行なっていることの多い実業団群。九電工及び安川電機はベテラン世代を戦力に据えつつも、若手世代の選手数が多いことから、近年「大卒選手のリクルート」に舵を切ったことが伺える。一方で、安川電機の古賀のように高卒ルーキーのスカウト及び育成も続けていることも読み取れる。西鉄はもともと大卒選手の起用が多かったが、コニカやスバルといった実業団と似たような戦力構成になっているのが気になるところ。

 MHPSリクルートがまばらで、「マラソン部」の看板を掲げて駅伝よりマラソンに注力している、という姿勢が読み取れる。それでも円熟期の選手が多かったために、ニューイヤー駅伝で上位争いができていた、という考え方ができそうだ。

 

 関西および中部の年齢構成分析は、地区予選が終わってから掲載予定。