〼(ます)健の備忘録

置き去りにしてしまいそうな好奇心を残せたら良いな。

箱根駅伝レビュー:シード校編

 箱根駅伝のレビュー記事を。チームの大まかな流れと「勝手に選ぶ大学MVP」について言及したい。

 

1位東海大学(予想1位)

往路2位 鬼塚(6)−湯澤(8)−西川(7)−館沢(2)−西田(2) 

復路2位 中島(2)−阪口(2)−小松(1新)−湊谷(2)−郡司(3)

 順位予想記事に書いたように2区5区6区7区で青学に大きなリードを取られなかったことで2位につけ、8区以降で駒不足の東洋大学を振り切っての初優勝。最も、3区4区5区の展開は全く予想していなかった。3区でおおよそ故障明けとは思えない森田に1分半やられたが、その分以上、館沢と西田取り返した格好となった。

 来年以降も優勝候補筆頭とは言われているが、両角監督は五輪の選考や世陸を優先させるという方針を明確に打ち出しているため、トラックで日本トップクラスの力量を有する館沢や阪口はいい意味でいないものとして考えるのが良さそう。それでも、山を走った西田、中島らのいわゆる「ロード組」が中心になって、来年の箱根も主役になるだろう。

・MVP:湯澤

 スッキリ!で木村主務も推していた。村澤(現日清食品)が卒業してからというもの、2区は東海の泣き所となっていた印象がある。そこを67分台に肉薄するタイムで走り、逆に青学に差をつけた功績はやはり大きい。

 

2位青山学院大学(予想2位)

往路6位 橋詰(3)−梶谷(10)−森田(1新)—岩見(15)−竹石(13)

復路1位 小野田(1新)−林(1)−飯田(2)—吉田圭(1)−鈴木(2)

 まさかだった。3区終了時は「ああ、例年通りの青学か」と思ったが、4区の岩見が4区はまだ早かったのか、東洋の相澤に捻られて一気に失速。でも竹石がいるから2分差にはなるかな、と考えていたらその竹石もまさかの失速。これで優勝は難しいかな、と思った。しかし復路は誰一人崩れず2位まで浮上し、そこはさすが王者といったところだった。東海は6区7区に青学と同等の戦力を有していたので逃げ切れたが、どちらかで隙を見せていたらどうなっていたか…

 来年は中軸となる森田、小野田、林、橋詰、梶谷らが抜け、岩見と竹石も一からのスタートとなることでまさしく「挑戦者」としてのスタートになるが、なんだかんだ戦力を整えてくるだろう。今回未出走のメンバーにも吉田祐、湯原、神林と実力者は揃っている。立て直しが楽しみなチーム。

・MVP:小野田

 5区竹石が崩れ、復路も初めての「大差を追う展開」だったところを、例年以上のスピードで駆け抜け、前人未到の57分台に到達したのだから文句なしのMVP。青学の最初の課題は、この選手の後釜を見つけることなのかもしれない。

 

3位東洋大学(予想3位)

往路1位 西山(1)−山本(4)−吉川(4)−相澤(1新)−田中(8)

復路5位 今西(3)−小笹(3)−鈴木(3)−中村(19)−大澤(10)

 往路は間違いなく主役だった。不振の西山が去年を思い出させる走りで復活すると、山本、吉川の2人もトップこそ譲ったものの上位を守る。そして圧巻の区間新を叩き出した相澤。ここだけで区間2位に2分つけるのだから何かがおかしい。山も「去年より2分」の公言通り大きくタイムを縮めたが、それ以降の復路は故障のため欠場した渡邊(3年)が欠けたこともあり、東海にねじ伏せられる格好になった。

 来年度以降もエース力は全大学中でもトップクラス。戦える層を厚くすることがこれからの課題となるだろう。

・MVP:相澤(4区)

 大塚の区間記録どころか、藤田敦史が樹立した60分56秒の記録をも上回るコースレコードを叩き出し、たった一人で往路優勝を決定づけたという印象が強い。文句なしのMVPと言える。

 

4位駒澤大学(予想4位)

往路4位 片西(7)−山下(9)−大聖(5)−加藤(11)−伊東(5)

復路4位 大成(6)−小島(4)−伊勢(4)−堀合(5)−下(11)

 常勝軍団の面目躍如といった復活レースだった。片西−山下のリレーで狙い通り上位につけて、鬼門の山も乗り切って粘り切り、復路は堅実な走りで4位を守りきった。上位のチームで言うところの相澤や小野田、過去の駒大で言うところの中谷といった大きく順位をあげられるゲームチェンジャーがいない分上位には届かなかったという印象。

 来年度は往路の穴は片西のみ、復路は3人が抜けるという形になった。復路のハーフを堅実に走れる4年生の穴はすぐ埋まりそうだが、片西というエースの穴はそう埋まらなさそう。総合優勝を狙うのであれば、突き抜けたエースの育成は急務になるか。

・MVP:中村大成(6区)

 往路4位で終えたが、復路は6区が西澤(現小森コーポ)の卒業以降ピリッとしなかったことで不安があった。しかしそこを58分台に迫るタイムで駆け抜けた。今回の3強は58分台を当たり前のように出せる大学ばかりであったため、その点でようやく同じ土俵に立てる予感を感じさせた。

 

5位帝京大学(予想5位)

往路9位 竹下(11)−畔上(14)−遠藤(3)−横井(3)−小野寺(16)

復路3位 島貫(5)−岩佐(6)—鳥飼(9)—小森(3)—星(1)

 往路はどの区間も崩れずじわじわ順位をあげるのかと思ったらそうでもない展開。1区竹下2区畔上があまり伸び切らず…というところから3区「大砲」遠藤がジャンプアップ、4区横井が繋いで、というところで5区小野寺が洗礼を浴び、9位フィニッシュという帝京らしからぬ展開に。一方で復路は分厚い選手層から区間上位を連発してじわり上位に上がる、という、こちらは帝京らしい戦い方ができたのではないか。星の区間賞はその延長線上にあったように感じる。

 来期は往路の4年生は3人抜けるが、復路の5選手は誰が往路を走ってもおかしくなかった。そして復路はまた新たな候補が出てくるだろう。そして「大砲」は健在。来年もまた上位争いできるだろう。

・MVP:遠藤(3区)

 帝京待望の「ゲームチェンジャー」として、3区で悪い流れを断ち切り、一気に上位争いに乗せて見せた。来年はどこの区間に起用されるのか、注目ポイント。

 

6位法政大学(予想7位)

往路5位 佐藤(5)—坂東(12)—岡原(14)—狩野(10)—青木(3新)

復路6位 坪井(4)—土井(5)—鎌田(7)—大畑(7)—鈴木(8)

 往路は佐藤こそまずまずの滑り出しをするものの、坂東、岡原が少々もたついてしまう。そこを狩野が踏ん張り、青木は額面通りの走りで5位に浮上、復路も坪井が最後まで小野田に食らいついて前との差を詰めて、そこからは後半にビルドアップする「いつもの法政」のスタイルで上位をキープ。最後帝京に飲まれたのは悔しかったか。

 来年も引き続き山がストロングポイントであり続け、2区も佐藤が走れそうな感じがする、復路の走り方もチームとして心得ている、とするとやはり、ジャンプアップのためには往路1区3区で戦えるスピードランナーをどうするか、が焦点になりそう。

・MVP:坪井(6区)

 4区で前が見える差で粘り通した狩野と迷ったが、それでもやはり未知数なところから復路の出だしで好発進し、國學院との差を詰めて後続を離し総合5位の目標を一気に射程圏に入れた功績は大きい。

 

7位國學院大學(予想9位)

往路3位 藤木(10)—土方(7)—青木(6)—茂原(14)—浦野(1新)

復路12位 江島(13)—鉢屋(12)—殿地(12)—長谷(12)—小中(13)

 往路は台風の目になった。浦野抜きで臨んだ1〜4区で4強グループと競り合う時間もありながら6位になったのは衝撃だったし、そのあとの浦野の区間新の激走で「大八木超え」を達成したのも見事だった。復路は法政ほどのレベルではないものの全員が区間中位で走りきり、7年ぶりのシードをものにした。往路を中心に、浦野、青木、土方の三本柱での貯金を守りきれる采配が的中した結果といえる。

 来期も往路は全員残り、今回未出走の実力者臼井もいる。とはいえ、これより上の順位を目指すには、区間1桁が取れるような選手がもっともっと必要ということが、復路ではっきりしたように思える。

・MVP:藤木(1区)

 MVPは三本柱ではなくこの選手。差がつかなかったもののエース級が揃う1区で粘り切った。これがなければ、浦野の5区コンバートも、区間新記録もあり得なかったように感じる。

 

8位順天堂大学(予想10位)

往路7位 澤藤(19)—塩尻(2)—橋本(12)—小林(19)—山田(4)

復路13位 清水(15)—藤曲(9)—金原(13)—吉岡(11)—鈴木(14)

 7位の國學院の戦術を、より尖ったものにしたのが順天堂。そんな印象。とにかく往路は難波、野口の2人の主力を欠いてどうなるかと思いきや、レジェンダリーレコードを塗り替えた塩尻、「職人」ぶりを見せつけた山田の2人で貯金を荒稼ぎし、復路も6区7区で大きくこけることなく滑り出してその貯金を守り切った。

 来期はその貯金を作った塩尻、山田の2人と復路で粘り切った4年生が穴となる。一方で、難波、野田、野口といった未出走の実力者の数も多く、実力者がしっかりと箱根に合わせられるようにしていけるかがまず課題になるだろう。

・MVP:塩尻(2区)

 仕事はするだろうと思っていたがまさかここまでとは…1区19位発進から流れを強引に取り戻し、三代の記録をも塗り替えた。この穴は並大抵で埋まるものではないだろう。

 

9位拓殖大学(予想8位)

往路8位 赤崎(18)—デレセ(6)—馬場(8)—石川(13)−戸部(6)

復路15位 硴野(18)—吉原(17)—白髪(14)—清水(14)—松岡(5)

 まず往路はいまいち流れに乗り切れなかったか、という印象。赤崎がまさかの出遅れを喫すると、デレセが8人抜きでシードに肉薄するも、去年ほどは突き抜けた結果にならず、往路はシード権ギリギリの8位となる。復路も硴野が去年のようには行かず、7区以降も懸念されていた選手層の薄さが露呈、10区松岡が決死の走りでなんとかシード安全圏に逃げ込んだ形になった。

 来期は指揮官が名将、岡田監督から交代し、主力もごっそり抜け、留学生の採用も不透明。正念場を迎えることになりそうだ。幸い、2年生は今回好走した松岡を中心に層が厚いので、この世代がどうなるかが注目か。

・MVP:戸部(5区)

 MVPたる所以は、やはり終盤まで法政の青木に食らいつき、シード安全圏まで逃げ込んだことだろう。このおかげで、松岡を中心にした復路のメンバーも逃げ切りができたように思える。

 

10位中央学院大学(予想11位)

往路10位 川村(14)—高橋(16)—栗原(13)—有馬(6)—高砂(9)

復路10位 樋口(12)—吉田(16)—大濱(5)—釜谷(15)—石綿(9)

 序盤、川村、高橋という前哨戦でエース区間を戦った2選手が洗礼をあび、栗原も悪い流れに飲み込まれたが、4区有馬が区間6位の走りで浮上し、秘密兵器・高砂で一気に浮上。復路も薄氷の戦いであったものの、8区予想外の起用になった大濱が区間5位ながらシード安全圏に逃げ込み、これが効いた。主力の4年生を複数欠いた中でのシード権ということで、地力は付いてきていることを印象づけた。

 来期は山下りの樋口こそ抜けるが、主要区間を走る選手は全員残る。さらにいえばスピードランナー横川、1年時から箱根を走ってきた藤田と上積みはある。さらに、大濱のようなシンデレラ・ボーイの台頭にも期待したい。

・MVP:有馬(4区)

 早稲田の主将・清水を使いながら、悪い流れを完全に完全に断つ走りを見せ、更に前が見える位置でたすきを渡したことで、久しぶりの駅伝となる高砂の力を引き出したように見えた。

 

 予選落ち校のレビューは、またこれから。