箱根駅伝レビュー:予選会校編
昨日の続きで、こちらは予選会校。
11位中央大学(予想18位)
往路12位 中山(2)—堀尾(5)—三須(16)—池田(9)—岩原(20)
復路8位 舟津(17)—関口(15)—矢野(8)—苗村(8)—川崎(6)
随所で見せ場は作れた箱根ではないだろうか。堀尾・中山のWエースはやはり強く、戸塚を3位で通過、3区でポジションを下げるも4区池田が再浮上、それ以降も予定されていた畝、三浦の出走が叶わなかった分シードに手が届かなかったものの8区以降は驚異的な追い上げもあった。全体的に故障者・不調者に泣いた駅伝となった。
来期は堀尾、中山が抜けるため、序盤区間を走れるエースの育成は急務と言える。ただし、池田や川崎など2年生の台頭も見られるのが来期に向けての光か。
・MVP:川崎(10区)
正直当日交代があると思っていた…。展開に助けられた部分もあるだろうが、区間6位の力走でシードに望みをつないだ。来年度以降に繋がる走りだったと言えそうだ。
12位早稲田大学(予想12位)
「2区はごまかしがきかない」相良監督自らそう語っていたのにどうして…と言う感想がまず1番に出てきてしまう。1区中谷こそ最強ルーキーの片鱗を見せる1区4位の走りをするも、2区太田智が区間ブービーの走りで大きく出遅れ、さらに5区本命の吉田を欠いたことが最後まで響いた格好になったか。それでも他の選手、とりわけ4年生やこれまで不振の3年生・新迫が懸命に前を追った姿は、名門校の意地を感じさせた。
来期の穴としては清水、小澤の2人のみで、太田智、吉田の復活、強力ルーキーの加入など上がり目も多い。とにかく調整、故障対策をしっかりすれば駒大のようにすぐ上位戦線に戻ってこられるはず。
MVP:清水(4区)
2区太田智が手放し、3区千明がギリギリのところで踏みとどまった後の4区。ここで前を追い、シードラインに迫った。この激走は、今期の早稲田で孤軍奮闘していた姿も相まって見るものの心を打ったはず。
13位日本体育大学(予想17位)
往路16位 池田(12)—山口(13)—岩室(17)−廻谷(18)—室伏(11)
復路9位 濵田(9)—志賀(11)—森田(16)—林田(6)—中川(16)
「手堅く」が信条のチームなだけに、ワンミスが命取りに、という格好になった。序盤2区間がうまく滑り出したが、3区前哨戦好調の岩室が区間17位で遅れると、絶好調・廻谷でも止められず。山と「8人集団」の一員として追いかけた復路で少しずつ盛り返すが、一歩足りずといった印象。
来期には5区9区以外は残る上、復路で3年生が箱根を経験できたことは非常に大きい。さらなる上積み要素として、3区岩室10区中川の復調があるだろう。予選会からのスタートでさらに立て直すことに期待。
MVP:山口(2区)
これまでエース区間で洗礼を浴び続けていて、今回の2区も苦戦が予想されていたが、大崩れせず区間中位で乗り切った。この走りができるのであれば、来年以降はもっと上位で争えるだろう。
14位日本大学(予想15位)
往路13位 横山(17)—ワンブイ(1)—野田(20)—武田(8)—鈴木(14)
復路17位 宮崎(16)—加藤(10)—松木(11)—阿部(18)—金子(17)
少なくとも一時期のような「留学生頼り」から脱却した姿を見せたような感じがした。1区横山3区野田は流石に苦しかったが、4区で武田が浮上すると、そこから9区阿部に回るまで8人の中位集団で粘りぬいた。日本人エース阿部は不調によるコンバートだったようでここで力尽きたが、7区からズルズルと落ちていくことなくまとめたのは良かったのではないか。
来期は新留学生こそ未知数だが、阿部の復活と往路を走った若手の成長、そして恵まれたスカウトからの新戦力の台頭があれば、留学生に頼らずとも十分戦える予感が漂う。
・MVP:鈴木(5区)
エース阿部が抜け、代役として入ったものの全日本では辛酸を舐めており、どうなるかと思いきや2つのポジションアップを見せた。武者監督の山の眼力も感嘆ものだが、起用に応えたルーキーの胆力を讃えたい。
15位東京国際大学(予想14位)
往路17位 モグス(8)—伊藤(11)—真船(11)—相澤(17)—加藤(21)
復路16位 河野(14)—芳賀(6)—山瀬(6)—浦馬場(21)—内山(18)
往路序盤まさかここまで戦えるとは…モグスは期待ほど行ききれず区間8位に留まったが、2区伊藤が出入りの激しい区間を乗り切り、3区真船が7位浮上!珍しく山では失敗したが、7区芳賀8区山瀬までで浮上。こちらも日大同様9区以降で力尽きたが戦えるところを見せ、大学初の完走を果たした。
ここは来期楽しみというか勝負となるチームの一つ。下りの河野以外全員残り、未出走の主力も複数在籍している。山上りも予定していた選手ではないということで上積みが期待でき、芳賀や山瀬は往路でも戦えそうな予感漂う。箱根予選会のみならず、全日本大学駅伝の予選も突破できそうだ。
・MVP:芳賀(7区)
6区の集団最後方からスタートしながらも、ルーキーらしからぬ走りで「8人の集団」に合流する区間6位の力走を見せた。来年以降は往路の主要区間を任されてもおかしくないだろう。
16位神奈川大学(予想16位)
往路18位 山藤(15)—越川(15)—井手(9)—枝村(21)—小笠原(22)
復路11位 荻野(7)—多和田(14)—安田響(15)—北崎(4)—佐久間(20)
実績のある1区がピリッとせず、そこから先の区間では流れに乗れず力負けという意味で92回(我那覇1区—健吾2区のとき)と似たようなものを感じた。とはいえ、その時に比べると主要区間・特殊区間での下級生の健闘が多く、「来期に繋げる」というテーマについてはある程度達成できたのではないか、という印象。
「来期に繋げる」という意味で、越川が華の2区を経験し、ルーキー三銃士の一人、安田も箱根路を経験し、井手・荻野・北崎が健闘を見せたことは大きい。今回未出走の安田共も戻れれば、来年にも期待が持てる。
・MVP:北崎(9区)
8区までで「8人集団」からジリジリと離されていた神奈川大学。そこに待ったをかけ、集団に戻り、それどころか引っ張る力走を見せた。来年は往路4区あたりの起用も考えられる。
17位明治大学(予想13位)
往路11位 鈴木(13)—中島(19)—阿部(2)—三輪(7)—酒井(15)
復路21位 前田(8)—小袖(18)—角出(16)—村上(10)—坂口(22)
6区までは本当に理想のレースができていたと思う。2区までで耐えて3区4区でジャンプアップしてシード権内に入って、山を凌いで復路の強力なランナーで安全圏へ、という流れで、久しぶりのシードも十分考えられた。しかし、懸念事項であった「終盤の垂れ」が7区以降露骨に出てしまい、復路終盤まで取れそうで取れない位置にいてしまったように思う。坂口については、病に起因する失速も織り込み済みの起用で仕方ないか、という印象。
来期以降も28分台ランナーをずらりと揃え、スピードのあるタレントが揃っている。終盤の失速をいかに克服するか、がテーマになるだろう。
・MVP:三輪(4区)
阿部の作った流れにうまく乗るどころか、それを加速させる区間7位の力走で、シード権内に逃げ込んだ。さすがはアクシデントがなければエース、と称される実力であった。
18位国士舘大学(予想21位)
往路14位 住吉(9)—ヴィンセント(3)—多喜端(18)—戸澤(22)—鼡田(12)
復路20位 高田(19)—長谷川(20)—藤江(18)—石川(17)—加藤(19)
「突進の国士舘」が箱根路に帰ってきた。住吉が出入りの激しい1区を耐え、2区ヴィンセントがクレバーな走りでトップに。3区4区で順位を落とすも、5区で鼡田が盛り返し14位ターン。復路もこのまま繰上げ回避を狙うも、6区高田以降がうまく流れず、選手層の薄さを露呈し繰上げスタートにあってしまった。が、これまで以上に戦えるところは示したように映った。
来期も2区5区と替えのきかない区間に柱が残るのは大きいが、そこまでの選手が心もとない、という印象。一人でも多く、箱根で通用する選手を育成できるか。
・MVP:ヴィンセント(2区)
たとえ留学生であろうと、2区は難しい区間。その上目の前に首位集団が見えるも追いつかないもどかしい展開の中、クレバーな走りで見事に首位に立ち、歴代留学生でも上位の実力の片鱗を示した。
19位大東文化大学(予想19位)
往路21位 新井(22)—川澄(22)—斎藤(15)—奈良(5)—佐藤(7)
復路14位 藤岡(10)—三ツ星(8)—片根(20)—谷川(13)—中神(12)
1区新井の転倒に関しては色々あるだろうが、正直な話、途中棄権でもおかしくなかったと思う。しっかりとケアをしてほしいところ。2区川澄は悪い流れに飲まれたが、3区斎藤以降は逞しく前を追い続けた。4区奈良は初めて箱根で結果を残し、山も上位で乗り切り、復路も片根こそ力不足だったが上中位でまとめ切った。
来年度はこの「這い上がった経験」を糧に強くなるだろう。特に奈良は完全に殻を破った印象すらある。山も経験者が残るのが強み。
・MVP:斎藤(3区)
奈良と迷ったが、個人的にはこちら。やはり悪い流れを切る口火になったのは白タスキで力強く前を追いかけた3区斎藤の健闘だったと思う。
20位城西大学(予想6位)
往路19位 鈴木(16)—金子(20)—中島(21)—西嶋(15)服部(10)
復路18位 松尾(21)—雲井(22)—大石(21)—中原(15)—大里(4)
エース荻久保こそ欠いたものの、今の城西なら大丈夫だろうと思っていたが悪い流れに完全に飲み込まれた印象。鈴木が出遅れると金子は留学生・塩尻に抜かれるのみで勢いに乗れず、ここまでくると山男、服部でも挽回不可能な差がついてしまった。復路もルーキー松尾が出遅れると終始悪い流れに飲まれた格好になった。唯一の区間一桁、大里が救いか。
来期はエースと山こそ抜けるが、ポテンシャルの高い選手は揃う。荻久保が戻り大里ら2年生がもう一皮向ければ、またシード戦線に舞い戻って来られるだろう。
・MVP:大里(10区)
ずっと悪い流れのままの城西にとって、唯一の希望の光になった。また、10区は荻久保も走った区間、この後大里も活躍して、10区を「出世区間」にできるかにも注目したい。
21位山梨学院大学(予想20位)
往路22位 清水(21)—永戸(17)—中村(22)—宮地(20)—久保(17)
復路19位 池田(20)—川口(19)—山田(19)—森山(20)—片山(14)
ニャイロを欠き、苦しい戦いになるという予想だったが、その予想に違わない戦いになった。1区清水が揺さぶりに耐えきれずすぐに脱落すると、エース永戸も乗り切れず、そこからはずっと力負けの区間になってしまった。復路も一斉スタートから遅れ、そこからも厳しい戦いが続いてしまった。
来期はニャイロも永戸も中堅層も抜け、上積み要素としても3年首藤の復帰、2年生以下の成長くらいしか考えられない。まだまだ山梨学院に吹く疾風はおさまらなさそうだ。
・MVP:該当者なし
終始低空飛行に甘んじ、印象に残る走りをした選手もいなかったため、厳しい評価になるが該当者なしとする。来年こそは通用する選手を育成してほしいところ。
22位相当学生連合(13位相当予想)
往路23位 近藤(22)—西澤(21)—鈴木大(20)—国川(21)—相馬(13)
復路17位 古林(12)—田中(11)—鈴木悠(7)—鈴木陸(16)—米井(21)
今年はもっとやれる予感は漂っていたが…1区近藤が出遅れると、2区米井のスライドで入った西澤も苦しい走りとなり、4区小田原で繰り上げの憂き目にあった。一方で、復路は大健闘。古林が区間12位で滑り出すとそこからは8人の集団で懸命に粘り切り、持てる力を出し切ったのではないだろうか。
・MVP:古林(6区)
実力発揮のために大事な「流れ」を、あわや60分切りの好タイムをもって復路で作ったというのが大きい。防衛大初のランナーとして大いなる爪痕を残した。
22位上武大学(22位予想)
往路20位 斎藤(20)—太田黒(18)—鴨川(19)—石井(12)—橋立(19)
復路22位 佐々木(22)—坂本(21)—岩崎(22)—松下(22)—大森(21)
1区に熊倉、鴨川といった主力でなく斎藤を起用した時点で厳しいか?と思っていたが、やはり力不足で出遅れ、エース太田黒、成長株の鴨川も苦しい走りになった。4区で石井が盛り返すも、期待の橋立がうまくいかず。復路も6区途中まで好調だった佐々木も山下りアレルギーを克服できず、そこからは最下位に沈んでしまった。
来期は太田黒が抜け、いよいよ予選会通過も危ぶまれる戦力になってしまった。現有戦力を含め、エースの育成も戦力の底上げも急務と言える。
・MVP:石井(4区)
こちらも上武の唯一の希望となった選手。20位から始まり、ずっと低空飛行で前に他の走者もいない中区間中位で走り、有終の美を飾った。このようなしたたかな選手を育成したいところだ。
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