読書ログ 古典を読む①きっかけと夏の読み物
この夏、大学まで夢中になって読んでいた「古典を読む」ことを再開した。
きっかけは意外にもTwitterで「#この岩波文庫がすごい」のタグを見て、読書欲が再燃したのである。
では、なぜ古典を読むようになったのか。
大学の頃の教授がこういうことを仰った。
(昔の話なので、間違えている可能性あり)
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何かを論じたり、説明するにあたっては、「確かなこと」を根拠としなければならない。
そして今を生きる我々にとって根拠とすべき確かなこととは、思考の末に生まれ、その時々の批評に耐えたものである。古典とよばれる文章群はそれに該当する。
ゆえに、古典を読むことは、自分が根拠として援用できる「確かなこと」のストックを増やす行為だといえる。
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こういう理屈について、当時学生だった自分は半分くらいしか理解できていなかった。それでも有益だと信じて読んでいたらハマっていた、というわけである。
もっとも、就活やそのための勉強をしていたり、バイトやサークルに明け暮れていた時期、あくまでも「学問を修める者」としてのアイデンティティを確保するために読んでいた、というのも少なからずあるのだけれども。
小難しい話はここまでとして、これまでに読んだ本と夏の期間に読んだ本をいくつか紹介する。
【各項目について】各5段階
・読みやすさ:内容が理解しやすいか、さくっと読めるか
・読了感:読みごたえがあったか
<学生時代読んで特に印象に残った本>
読みやすさ:5
読了感:5
自分の読書の原点となった本。
デカルトが提唱する思想の方法論を述べた上で、その際に立脚する「確かなこと」とは何か?という疑問にまで切り込んでいく一冊。
デカルトの思想はとかく「我思う、故に我あり」が一人歩きしがちな印象だが、そこに至るまでの過程をトレースすることができる。
文庫そのものは非常に薄いため、とっかかりとしては非常に手軽に読めるのも嬉しいところ。
マックスウェーバー「プロテスタンティズムの論理と資本主義の原理」
読みやすさ:2
読了感:5
「資本主義を生み出した思想とは?」という問いに対し、対象となるキリスト教の思想について、丹念に列挙、分析した上で、資本主義につながる教義をあぶり出した一冊。
1冊がかなり厚く、分析が丹念であるがゆえに論理を追いかけるのは骨が折れるが、現代の思想に根付く「資本主義」につながる人間の思想に触れることができる。
<2019夏に読んだ本>
マルクス・アウレリウス・アントニヌス「自省録」
読みやすさ:5
読了感:1
ローマ五賢帝の時代の「哲人皇帝」が残した、皇帝としての自分を律するための思想を著した一冊。
うたわれている概念の多くについては、今も世間一般的に「人間かくあるべし」と言われるような生き方に他ならない。が、こうした思想をまとめた本が今も読まれ名著とされるということは、それだけ「人間かくあるべし」は早い段階から確立された思想のフレームで、かつその実現が難しいことを示しているのだろう。自分としても、ページをめくるたびに後ろめたさを感じてしまい、読了感としては最悪で「ずっと哲人皇帝に説教を受けた感覚」さえ覚えた。
読みやすさ:3
読了感:3
美濃部達吉による連載記事集の形をとり、大日本帝国憲法の解釈、運用についてこまやかな解説が加えられた一冊。参議院選挙を前にして、読んでおきたいと思ったので選択。
大日本帝国憲法と日本国憲法で相違が多くあるために現実に照らしてどう、といえる部分は少ないが、憲法および三権のありかた、天皇の立ち位置などに関して細やかな解説がされていた、いわば教科書的な印象を受けた。ただ、国民の「参政権」への考え方(とかく政府任せにして、国政への不参与を決め込む態度)に関していえば、今も昔もものの本質は変わらないんだなあ、と思わされる。
アラン「幸福論」
読みやすさ:5
読了感:2
「幸福」というテーマに基づきアランが著した短編93編をまとめた一冊。「#この岩波文庫がすごい」で見つけて読んでみたくなった本。
内容としては、理性により感情を相対化しコントロールする手法を使ってマイナス感情を切り離すやりかた(現代風にいえば「内省」と呼ばれるもの)に基づいた楽観主義思想の紹介、というのが妥当かと。ストレス・マネジメントに関する実用書のような印象を読んで受けた。
形式としては、具体的なケースに徹底して即していて、かつ短編に分けられていることから読みやすい。一方で、読むときに一息いれやすいので、何かの合間にちょっとずつ3週間かけて読むという形の読書になってしまい、全体的に間延びした感覚もあった。(これは個人の問題の域を出ないのだけれど)
こんな形で熱いうちにブックレビューを書き留めていくことで、読書体験を血肉にできると信じ、今回は筆を置くこととする。